【症例】1日に何度もの便意とガスで授業に集中できない高校生|過敏性腸症候群の薬が効かなかった理由と3ヶ月の経過

  • 授業中、またお腹が鳴りそうな気配がする。
  • ガスが溜まって、お腹が張って苦しい。
  • 「今、音が出たらどうしよう」——そればかりが気になって、黒板の内容が頭に入ってこない。
  • トイレに立つのも、一日に何度もとなると気が引ける。
  • 朝は起きるのがつらく、起きてもだるくてふらつく。
  • 通学の電車では吐き気とめまいと冷や汗に襲われ、途中で降りたくなる。
  • ——そして、また学校を休む

——そして、また学校を休む。

今回ご紹介するのは、そうした毎日を過ごしていた高校生の女子の症例です。

内科では過敏性腸症候群と診断され、処方されたお薬を飲みました。変わらないので、種類を変えてもらいました。それでも、変わりませんでした。

次に小児科を受診し、別の診断名がつきました。そこでもお薬が処方されました。それでも、変わりませんでした。

2つの診療科を受診し、2つの診断名がつき、複数のお薬を試した。それでも、症状は続いていた。

この記事では、当院(大阪府枚方市・牧野駅/枚方自律神経調整院)が何を検査し、どこに原因を見立て、実際に何を行い、3ヶ月でどのような経過をたどったのかを、順を追って詳しくご紹介します。

お腹の不調でお悩みの方、そしてお子さんのお腹の不調に心を痛めておられる保護者の方に、「まだ試していない見方があるかもしれない」とお伝えできれば幸いです。

はじめにお読みください
本記事は、当院にお越しになった方の経過を紹介するものであり、個人の経過報告です。すべての方に同様の変化が起こることを保証するものではありません。また、当院の施術は医療行為ではなく、病気の診断・治療を行うものではありません。

目次

症例の概要

項目内容
お客様高校生・女子
主訴①1日のうちに何度も便意がある ②ガス(おなら)がたまりやすく、授業に集中できない ③朝起きづらく、起きてもだるくふらつく ④通学の電車で吐き気・めまい・冷や汗が頻繁に起こる
生活への影響何度も学校を休んでいた
医療機関での経過内科で過敏性腸症候群と診断 → 処方薬で改善せず → 薬の種類を変更するも改善せず → 小児科を受診し別の診断 → 処方薬でも改善せず
主な検査所見上部頸椎・上部胸椎のゆがみが強く、椎体の動きも悪い/頸部・肩の筋肉の強い張り/腰を丸め骨盤を寝かせて座る姿勢眼球運動(パスート)が滑らかにできない/お腹全体の張りが強く、特に胃の動きが悪い/甘い物・小麦を好んで食べる食習慣
当院の見立て慢性的な姿勢の悪さで体の機能が落ちていたところへ学校でのストレスが重なり、自律神経機能が低下。循環機能・消化機能が低下し、消化機能の低下からSIBO(小腸内細菌異常増殖症)の状態になってガスがたまっていたのではないか
行ったこと背骨・骨盤を整える/正しい座り方・動作の指導/高FODMAP食をできる範囲で減らす/よく噛んで食べる

主訴と、当院に来られるまでの経緯

1日に何度もの便意と、たまり続けるガス

ご相談の中心は、お腹でした。

1日のうちに何度も便意がある。そして、ガス(おなら)がたまりやすい。

この2つが、この方の学校生活を大きく制限していました。

「授業に集中できない」というつらさ

ガスがたまりやすいという症状の本当のつらさは、お腹の苦しさだけではありません。

教室という空間を、少し想像してみてください。

  • 静かです。物音が響きます
  • 席は決まっています。簡単に移動できません
  • 周りには同級生がいます。しかも思春期です
  • 授業中にトイレに立つには、勇気が要ります

この環境で、「お腹が鳴るかもしれない」「音が出てしまうかもしれない」という不安を抱え続ける。

授業の内容は、頭に入ってきません。

そして、ここに重要な悪循環があります。「音が出たらどうしよう」という緊張そのものが、お腹の動きをさらに乱すのです。

  • 緊張する
  • 交感神経が優位になり、消化管の動きが乱れる
  • お腹の症状が強くなる
  • 「やっぱり」と、さらに緊張する

気にするなというほうが無理な話です。この輪は、意志の力では断ち切れません。

さらに、この症状には理解されにくさもついてまわります。「おならくらいで学校を休むなんて」——そう言われてしまえば、本人はもう何も言えなくなります。相談しづらい症状であることが、事態を長引かせます。

朝起きづらく、起きてもだるく、ふらつく

お腹だけではありませんでした。

  • 朝、起きづらい
  • 起きても、だるい
  • ふらつきがある

夜間、腸の不快感で睡眠の質が落ちれば、朝の目覚めは当然悪くなります。そして、休めていない体は日中もだるく、立ち上がればふらつく。

お腹の症状と、全身の症状。この方の中では、すでに一つにつながっていました。

通学の電車で、吐き気・めまい・冷や汗

そして、学校にたどり着くまでに大きな壁がありました。通学の電車です。

電車の中で、吐き気・めまい・冷や汗が頻繁に起こる。

この3つが同時に出るというのは、体が強い緊張状態に置かれているサインです。冷や汗は、交感神経が急激に高ぶったときに出ます。

そして電車という場所には、この方にとって特有の条件がそろっていました。

  • すぐに降りられない
  • トイレがない
  • 人が多く、身動きが取れない
  • 揺れる(三半規管への刺激)
  • 朝、体が最もつらい時間帯に乗らなければならない

一度でも電車内でつらい思いをすると、「また同じことが起きるのでは」という予期不安が生まれます。その不安が、次に乗るときの緊張をさらに強めます。

学校に行きたくないのではなく、たどり着けない。この違いは、決定的に重要です。

内科で「過敏性腸症候群」と診断、薬を変えても

症状の重さから、この方はまず内科を受診されました。

診断は、過敏性腸症候群

処方されたお薬を飲みました。しかし、改善はみられませんでした。そこで、お薬の種類を変えてもらいました。それでも、変わりませんでした。

次に小児科へ。それでも変わらなかった

続いて小児科を受診されました。ここでは、朝起きられない・だるい・ふらつくといった全身の症状に対して、別の診断名がつきました。(当院にも、同じ診断でお越しになる方が多くいらっしゃいます。詳しくはこちらのページでご説明しています。)

こちらでもお薬が処方されました。それでも、改善はみられませんでした。

2つの診断名、複数のお薬。それでも変わらなかった

ここで、この方が置かれていた状況を整理します。

  • 2つの診療科を受診した
  • 2つの診断名がついた
  • 複数のお薬を試した
  • それでも、症状は続いていた

まず、はっきりお伝えしたいことがあります。

受診したことも、お薬を試したことも、決して無駄ではありません。

重大な病気が隠れていないかを確かめることは、何よりも優先されるべき段階です。過敏性腸症候群の診断がついたということは、その除外がなされたということでもあります。そして、お薬は多くの方にとって有効で、必要なものです。

ただ——お薬が担当している領域と、体の使い方や姿勢、消化の土台という領域は、少し違うというのが当院の考え方です。

薬を飲んでも変わらない。種類を変えても変わらない。診療科を変えても変わらない。その間もずっと、学校を休み続けている。

この状況に置かれた高校生の消耗を、私たちは軽く見ることができません。

検査でわかったこと

当院では、初回に体の状態を詳しく確認します。この方には、次の所見が見られました。

① 上部頸椎・上部胸椎のゆがみが強く、椎体の動きも悪い

首の上のほう(上部頸椎)と、背中の上のほう(上部胸椎)に、強いゆがみが見られました。しかも、椎体(背骨のひとつひとつの骨)の動きそのものが悪い状態でした。

これは、単に「歪んでいる」というだけではありません。動くべきところが、動かなくなっているということです。

この2つの部位が重要なのには、理由があります。

【上部頸椎】
頭蓋骨のすぐ下、頭と体をつなぐ最上部です。重い頭を直接支えながら、頭の向きや傾きを脳へ報告し続ける、精密機器のような役割を担っています。また、この領域は自律神経とも関わりの深い場所です。

【上部胸椎】
ここが特に重要でした。内臓を動かしている神経も、背骨から分布しています。胸椎のあたりからは、消化に関わる神経も出ていきます。さらに、上部胸椎は肋骨とつながり、呼吸のたびに動くべき場所でもあります。ここの動きが悪ければ、呼吸も浅くなります。

首と背中の上部。その両方が、この方では動きを失っていました。

② 頸部・肩の筋肉の強い張り

首と肩の筋肉に、強い張りがありました。

これは①と表裏一体です。骨の動きが悪ければ、筋肉はその分だけ緊張して支えようとします。そして、緊張した筋肉は骨の動きをさらに制限します。互いに固め合う関係です。

そして、この張りは自律神経とも無関係ではありません。首から肩にかけては、自律神経と関わりの深い領域だからです。

③ 座り方 ——腰を丸め、骨盤を寝かせている

姿勢にも、明確な問題がありました。

腰を丸め、骨盤を寝かせて座ってしまう。

これは、多くの学生さんに見られる座り方です。椅子に浅く腰かけ、骨盤を後ろに倒し、背中を丸めて、頭を前に突き出す——スマートフォンを見ているときの姿勢を想像していただくと近いと思います。

この姿勢が、お腹に何をもたらすか。

骨盤を寝かせて腰を丸める

お腹の前面が、物理的に折りたたまれる

内臓が圧迫され、動けるスペースが減る

横隔膜が下がりにくくなり、呼吸が浅くなる

お腹のマッサージ効果(呼吸による内臓の動き)が失われる

私たちは、呼吸のたびにお腹の中をやさしく動かしています。横隔膜が上下することで、その下にある胃や腸が自然に押されたり緩んだりしているのです。

背中を丸めた姿勢は、その動きを一日中止めているようなものです。

そして、高校生の一日を考えてみてください。授業が6時間。加えて自宅学習。さらにスマートフォン。——丸まった姿勢で過ごす時間は、圧倒的に長いのです。

④ 眼球運動(パスート)が滑らかにできなかった

これは、他ではあまり行われない検査かもしれません。

パスート(追従性眼球運動)とは、動いているものを目で滑らかに追いかける動きのことです。指をゆっくり動かして、それを目だけで追っていただく——そういう確認をします。

この方は、この動きが滑らかにできず、苦手な方向がありました。

なぜ、お腹の相談で目を調べるのか。理由があります。

① 目の動きは、脳と神経の働きを映す窓だから
眼球を滑らかに動かすには、脳のさまざまな部位が協調して働く必要があります。動きがぎこちない、特定の方向が苦手——それは、神経の働き方に偏りがあるサインと捉えることができます。

② 目と首は、密接に連動しているから
目の動きと首の動きは、神経的に強く結びついています。上部頸椎の状態と、眼球運動の質は無関係ではありません。この方に上部頸椎のゆがみがあったこととも符合します。

③ 目からの情報の乱れは、めまいや吐き気につながるから
私たちの平衡感覚は、内耳・目(視覚)・首や体幹の深部感覚という3つの情報源に支えられています。目からの情報が不安定になれば、脳が受け取る情報全体の精度が落ちます。

この方は、電車の中で吐き気とめまいを訴えておられました。

揺れる電車の中では、流れる景色を目が追い続けることになります。目の動きが滑らかでない状態でこれを行えば、脳が処理する情報にズレが生じやすくなります。乗り物酔いと同じ原理です。

「電車での吐き気」という症状に、体の側から説明がつく所見があった。これは、この方の状態を理解するうえで大きな手がかりでした。

⑤ お腹全体の張りが強く、特に胃の動きが悪い

お腹に直接触れて確認したところ、全体的に張りが強く、特に胃の動きが悪い状態でした。

「動きが悪い」という点が重要です。硬いだけでなく、本来あるべきリズミカルな動きが乏しい。

胃の動きが悪いということは、食べたものが胃に長く留まりやすいということでもあります。そして、消化のスタート地点でつまずけば、その先——小腸、大腸——にも影響が及びます。

⑥ 食習慣 ——甘い物と、小麦

お話を伺う中で、甘い物と小麦を好んで召し上がっていることが分かりました。

これは、多くの高校生に当てはまることでもあります。菓子パン、パスタ、うどん、ラーメン、お菓子、菓子類の飲み物——手軽で、おいしくて、身近です。

この食習慣そのものが「悪い」という話ではありません。ただ、すでにお腹の調子を崩している状態の方にとっては、負担になりやすい——この点が、後の見立てにつながっていきます。

当院の見立て ——なぜ、薬だけでは変わらなかったのか

6つの所見を並べたとき、当院は次のような流れを考えました。

出発点:慢性的な姿勢の悪さ

まず土台にあったのが、慢性的な姿勢の悪さです。

腰を丸め、骨盤を寝かせた座り方。それに伴う上部頸椎・上部胸椎のゆがみと動きの悪さ。首と肩の張り。

この状態が、何ヶ月、何年と続いてきた。

すると何が起こるか。体の機能が、少しずつ落ちてきます。

  • 背骨が動かない → 呼吸が浅くなる
  • 呼吸が浅い → 内臓が動かされる機会を失う
  • お腹が折りたたまれている → 内臓が圧迫される
  • 首と背中が固まっている → 自律神経の働きにも影響が及ぶ

急には壊れません。けれど、確実に、少しずつ機能は落ちていきます。

そこへ、学校でのストレスが重なった

そして、学校でのストレスが重なりました。

思春期は、対人関係、学業、進路、部活動——さまざまなプレッシャーが同時にかかる時期です。加えてこの方の場合、「お腹が鳴るかもしれない」という教室での緊張そのものが、日々新しいストレスを生み続けていました。

すでに機能が落ちている体に、ストレスが上乗せされた。

自律神経機能が低下し、循環機能と消化機能が落ちた

その結果として、自律神経機能が低下しました。

自律神経は、心拍・血圧・呼吸・体温・消化といった、自分の意思では動かせない働きを24時間コントロールしています。ここが乱れると、まず影響を受けやすいのが——

【循環機能】
朝起きられない、だるい、ふらつく、電車で冷や汗が出る。これらは、血液を巡らせる働きの不安定さとして説明がつきます。

【消化機能】
胃の動きの悪さ、お腹の張り、頻回の便意、ガス。消化管の動きは、副交感神経が優位なときに活発になります。緊張が抜けない状態が続けば、消化管は本来の働きができません。

バラバラに見えた症状が、「自律神経機能の低下」という一点でつながりました。

消化機能の低下が招いたと考えられること ——SIBOという状態

そして、この症例で当院が特に注目したのが、ここです。

消化機能が落ちることで、SIBO(小腸内細菌異常増殖症)の状態になり、ガスがたまっていたのではないか。

SIBO(シーボ)とは、本来は細菌が少ないはずの小腸で、細菌が異常に増えてしまった状態を指します。

私たちの腸のうち、細菌が多く住んでいるのは主に大腸です。小腸は、食べたものを消化・吸収する場所であり、細菌は比較的少なく保たれています。この状態を保つために働いているのが、小腸が定期的に内容物を先へ送り出す動きです。

ところが、消化管の動きが落ちると、この「送り出す力」が弱まります。

すると——

消化管の動きが落ちる

小腸に内容物が長く留まる

小腸で細菌が増えやすくなる

細菌が糖質を発酵させ、ガスが発生する

お腹が張る/ガスがたまる/お腹が鳴る

この方の「ガスがたまりやすい」という主訴に、直接つながる流れです。

そして、ここで甘い物と小麦の話が効いてきます。発酵の材料になりやすい糖質を多く摂っていれば、発生するガスの量も増えやすくなるからです。

重要な注記
SIBOは、医療機関で診断される状態です。確定には呼気検査などが用いられます。当院が診断を行うことはできません。ここに記したのは、あくまで症状と検査所見から当院がそのように考えた、という見立てです。気になる方は、消化器内科にご相談ください。

一本の流れとして

まとめると、この方の状態はこう捉えられます。

慢性的な姿勢の悪さ(骨盤を寝かせた座り方・上部頸椎/胸椎の動きの低下)

体の機能が徐々に低下

そこへ学校でのストレスが重なる

自律神経機能の低下

【循環機能の低下】朝起きられない・だるい・ふらつく・電車での冷や汗
【消化機能の低下】胃の動きの悪さ・お腹の張り

小腸で細菌が増えやすい状態に(SIBO)

ガスがたまる・頻回の便意 → 教室での緊張 → さらに自律神経が乱れる

そして、お腹の症状に対する薬は、この流れのどこに働いていたでしょうか。

——流れの、いちばん下流です。

症状そのものを和らげる働きはあっても、上流にある「姿勢」「呼吸」「消化管の動き」には届きません。

「薬が効かなかった」のではなく、「原因の上流に、まだ手がついていなかった」。これが、当院の考えでした。

実際に行ったこと

① 背骨と骨盤を整える

まず、背骨と骨盤を整えることから始めました。

上部頸椎・上部胸椎のゆがみと、椎体の動きの悪さ。そして土台となる骨盤。ここを整えることには、複数のねらいがあります。

  • 上部胸椎が動くようになれば、肋骨が動き、呼吸が深くなる
  • 呼吸が深くなれば、横隔膜が上下し、内臓が動かされる
  • 骨盤が起きれば、お腹の前面の折りたたみが解消される
  • 上部頸椎が整えば、首の緊張がゆるむ

お腹を直接どうにかしようとするのではなく、お腹が動ける環境をつくる。これが施術の考え方でした。

② 自分でゆがませないための、座り方と動作の指導

そして——ここが、この症例で最も重要な部分かもしれません。

施術で整えても、一日6時間以上、丸まった姿勢で座り続ければ、体はまた元に戻ります。

そこで、正しい座り方と動作を指導しました。

なぜ「指導」が不可欠なのか。

施術者がこの方の体に触れられるのは、週に一度、限られた時間だけです。残りの時間を過ごすのは、ご本人です。

  • 授業中の6時間
  • 自宅学習の時間
  • スマートフォンを見ている時間

この時間の姿勢が変わらなければ、施術は毎回ゼロからのやり直しになります。

骨盤を起こして座る。腰を丸めない。——最初は意識しないとできません。けれど、繰り返すうちに、体はその姿勢を「普通」として覚えていきます。

施術は「きっかけ」、日々の姿勢は「積み重ね」。両輪が回って初めて、体は変わっていきます。

③ 食事 ——高FODMAP食を「できる範囲で」減らす

食事についてもお伝えしました。

高FODMAP(フォドマップ)食を、できる範囲で減らすこと。

FODMAPとは、小腸で吸収されにくく、腸内で発酵しやすい糖質のグループを指す言葉です。小麦製品、一部の乳製品、豆類、玉ねぎ、りんご、はちみつ、人工甘味料などが、これを多く含む食品として知られています。

吸収されにくい → 小腸に残る → 細菌の発酵の材料になる → ガスが発生する。

前章で述べたSIBOの流れと、まっすぐつながっています。

そして、この方が好んで召し上がっていたのは——甘い物と、小麦でした。

ここで、強調しておきたいことがあります。
お伝えしたのは「できる範囲で減らす」であり、完全に断つことではありません。
成長期の高校生にとって、極端な食事制限は栄養面の大きなリスクを伴います。また、食べられるものが減ること自体が、新たなストレスにもなります。
詳しくは「食事の見直しについて、必ずお読みください」の章をご覧ください。この章は必ずお読みください。

④ よく噛んで食べる

そして、よく噛んで食べることをお伝えしました。

地味に思えるかもしれません。しかし、この方の「胃の動きが悪い」という所見を考えると、非常に理にかなった提案です。

消化は、口の中から始まっています。

  • よく噛めば、食べ物が細かくなり、胃の負担が減る
  • 唾液が十分に混ざり、消化のスタートが早まる
  • ゆっくり食べることで、食事中に副交感神経が働きやすくなる
  • 早食いによる空気の飲み込み(呑気)が減り、ガスが減る

お金もかからず、道具も要らず、今日から始められる。そして、動きの落ちた消化管にとって、負担を軽くしてあげることは大きな助けになります。

3ヶ月の経過

最初の1ヶ月 ——「背骨がピンとして気持ちがいい」

施術を始めて最初の1ヶ月。この方は、背骨がピンとして気持ちが良いと感じておられました。

この段階では、まだお腹の症状に大きな変化はありません。

しかし、これは非常に大切な時期です。

長く続いた状態が、1ヶ月で劇的に変わることは多くありません。けれど、「体が気持ちいい」という感覚が生まれることには、大きな意味があります。

  • 体に対する感覚が戻ってくる(つらさ以外の感覚を、久しぶりに味わう)
  • 「続けてみよう」という気持ちが生まれる
  • 正しい姿勢が「気持ちのいいもの」として体に記憶される

姿勢の指導は、「正しいからやる」よりも「気持ちいいからやる」ほうが、はるかに定着します。この1ヶ月は、そのための土台づくりでした。

2ヶ月目 ——便意とガスが、あまり気にならなくなってきた

そして2ヶ月目あたりから、変化が現れました。

便意とガスの症状が、あまり気にならなくなってきたのです。

なくなった」ではなく「気にならなくなってきた」——この表現に、私たちは注目しています。

なぜなら、この方を最も苦しめていたのは、症状そのものと同じくらい「症状への警戒」だったからです。

  • 「また鳴るかもしれない」
  • 「音が出たらどうしよう」
  • 「トイレに行きたくなったら」

この警戒が薄れることは、教室で過ごせる時間が増えることを意味します。

症状が減る → 警戒が薄れる → 緊張がゆるむ → 消化管の動きがさらに落ち着く。悪循環が、逆方向に回り始めた瞬間でした。

朝も、徐々に起きられるように

同じ時期、朝も徐々に起きられるようになっていきました。

夜間の腹部の不快感が減れば、睡眠の質は上がります。睡眠の質が上がれば、朝の目覚めは変わります。そして、背骨と骨盤が整い、呼吸が深くなったことも、循環機能に働いていたと考えられます。

お腹が変われば、朝が変わる。この方の中で、症状は一つにつながっていました。

3ヶ月を過ぎた頃 ——休まず学校に行けるように

そして、3ヶ月を過ぎた頃

休まず学校に行けるようになりました。

何度も学校を休んでいた状態から、毎日通えるところまで戻られたのです。

通学の電車に乗り、教室で授業を受け、一日を過ごして帰ってくる。——当たり前のようでいて、この方にとっては何ヶ月も遠ざかっていた日常でした。

この症例から見えた3つのこと

① お腹の症状に、お腹以外の原因が関わることがある

この方に対して当院が最初に行ったのは、背骨と骨盤を整えることでした。お腹を揉んだわけでも、お腹に何かを塗ったわけでもありません。

腰を丸めた座り方が、お腹の前面を折りたたみ、内臓のスペースを奪い、呼吸を浅くしていた。

症状が出ている場所と、原因のある場所は、必ずしも一致しない。この症例は、そのことをはっきり示していました。

② 「上流」に手をつけないと、下流は変わりにくい

2つの診療科、2つの診断名、複数のお薬。それでも変わらなかった。

けれど、それは医療が間違っていたということではありません。重大な病気の除外は不可欠でしたし、お薬は多くの方にとって有効です。

ただ、この方の場合、症状を生み出している上流——姿勢、呼吸、消化管の動き——に、まだ手がついていなかった。

下流で水をせき止めても、上流から流れ続けていれば、いずれまた溢れます。

③ 施術と、日々の積み重ねの両方が必要だった

  • 背骨を整える施術。
  • 自分でゆがませないための座り方。
  • 高FODMAP食をできる範囲で減らすこと。
  • よく噛んで食べること。

この4つのうち、施術者が行ったのは1つだけです。残りの3つは、すべてご本人が日々続けてくださったことでした。

3ヶ月という期間で学校に戻れたのは、ご本人が生活の中で積み重ねてくださった結果だと、私たちは考えています。

【重要】食事の見直しについて、必ずお読みください

この記事を読んで、「うちの子も小麦をやめさせよう」と思われた保護者の方がいらっしゃるかもしれません。

その前に、必ずお読みください。

① 「完全に断つ」ことはお勧めしません

この方にお伝えしたのは、「できる範囲で減らす」です。完全な除去ではありません。

特に成長期のお子さんにとって、極端な食事制限は栄養面の大きなリスクを伴います。エネルギー不足、たんぱく質不足、カルシウムや鉄などの不足——成長期にこれらが不足することの影響は、決して小さくありません。

② 低FODMAP食は、本来「一時的に試して、戻す」方法です

低FODMAP食は、もともと「一定期間減らしてみて、症状が変わるかを確認し、その後は少しずつ戻していく」という手順で行われるものです。

長期間にわたって幅広く制限し続けることは、本来の使い方ではありません。腸内細菌の多様性が失われるおそれも指摘されています。

③ 自己判断ではなく、専門家と一緒に

食事による対応をお考えの場合は、消化器内科の医師や管理栄養士にご相談ください。

  • 何を、どのくらいの期間、どの程度減らすのか
  • その間、栄養をどう確保するのか
  • いつ、どうやって戻していくのか

この設計は、専門家と一緒に行うべきものです。

④ 「食べられないもの」が増えることも、ストレスになります

見落とされがちですが、非常に重要な点です。

  • 友達と同じものが食べられない。
  • 外食で選べるものがない。
  • 家族と違うメニューになる。

思春期にとって、これは想像以上の負担です。そして、そのストレス自体が自律神経に影響します。「体に良いはずのことが、別の形で負担になる」——本末転倒になっては意味がありません。

だからこそ、「できる範囲で」なのです。

【重要】症例掲載にあたっての注記と、受診の目安

症例掲載にあたっての注記

  • 本記事の内容は、当院にお越しになった方の経過の一例であり、個人の経過報告です。すべての方に同様の変化が起こることを保証するものではありません。
  • 施術に必要な回数・期間・変化の現れ方は、症状の種類、続いている期間、生活環境によって大きく異なります。
  • 当院の施術は医療行為ではありません。病気の診断・治療を行うものではなく、医療機関での検査・治療に代わるものでもありません。
  • SIBO(小腸内細菌異常増殖症)は医療機関で診断される状態です。本記事の記載は、症状と検査所見から当院がそのように考えた「見立て」であり、診断ではありません。
  • 現在、医療機関にかかっておられる方は、自己判断で治療や服薬を中止しないでください。当院から中止をお勧めすることは一切ありません。
  • 掲載にあたっては、ご本人・ご家族の許可をいただき、個人が特定されないよう配慮しています。

こんなときは、必ず医療機関へ

お腹の症状の背景には、医療機関での対応が必要な病気が隠れていることがあります。以下にあてはまる場合は、当院ではなく、必ず医療機関を受診してください。

🚨 医療機関での検査が必要なサイン

  • 血便が出る、便が黒い
  • 原因のわからない体重減少
  • 発熱を伴う腹痛や下痢
  • 夜間、眠っているあいだも症状で目が覚める
  • 貧血を指摘されている
  • 激しい腹痛が続く、だんだん強くなる
  • 嘔吐を繰り返し、水分が取れない
  • ご家族に炎症性腸疾患や大腸の病気の方がいる
  • 症状が急に始まった、または急に悪化している

また、次の場合も医療機関へご相談ください。

  • まだ一度も受診していない(まずは消化器内科・小児科へ)
  • 朝起きられない状態が続いている(小児科・思春期外来での評価をお勧めします)
  • 気分の落ち込みが強い、消えてしまいたいと感じる(心療内科・精神科、またはスクールカウンセラーへ)
  • 服用中のお薬を変更した後に症状が出始めた(自己判断で中止せず、処方医にご相談ください

当院は、医療機関での検査を受けたうえで、「異常は見つからなかったけれど症状が続く」「診断はついたが変化がない」という方を対象としています。医療機関との併用も、もちろん可能です。判断に迷われる場合は、必ず医療機関を優先してください。

同じようなお悩みをお持ちの方へ

お腹の不調は、外からは見えません。

そして「おならで学校を休む」という状況は、周囲に理解してもらうことが、とりわけ難しい症状です。だからこそ、ご本人は誰にも相談できず、一人で抱え込んでしまいます。

けれど、検査で異常が見つからないことと、あなたがつらくないことは、まったく別の話です。

今回ご紹介した方も、2つの診療科を受診し、2つの診断名がつき、複数のお薬を試しても変わりませんでした。それでも、姿勢・呼吸・消化管の動きという「上流」から見直していくことで、3ヶ月をかけて学校に戻っていかれました。

もちろん、同じ経過をどなたにも保証できるものではありません。ただ、「まだ試していない見方がある」ということは、お伝えできると思っています。

保護者の方へ。お子さんが「お腹が痛い」「学校に行きたくない」と言うとき、それは怠けではないかもしれません。まずは体に何が起きているのかを、一緒に見てみませんか。

一人で、ご家族だけで抱え込まずに、まずはご相談ください。

ご予約・お問い合わせ

項目内容
院名枚方自律神経調整院(あきさか整体院内)
院長田中 智(柔道整復師)
所在地〒573-1144 大阪府枚方市牧野本町1-20-5
最寄駅京阪本線 牧野駅
電話072-855-0334
受付時間9:00〜12:00/16:00〜20:00
定休日日曜・祝日・水曜午後
ご予約完全予約制

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この記事を書いた人

大阪府枚方市出身。柔道整復師(国家資格)。施術家歴25年以上、延べ100,334回を超える施術経験を持つ自律神経調整のスペシャリスト。

龍谷大学経済学部を卒業後、行岡整復専門学校で柔道整復師の資格を取得。大阪市内の関目病院にてリハビリスタッフとして勤務し、骨折や脱臼の処置、人工関節や靱帯再建、関節内視鏡手術後のリハビリを数多く担当。プロ野球選手をはじめとするプロスポーツ選手も入院する病院付属スポーツジムにて、手術後のトレーニング指導や投球フォームの改善など、トップアスリートへの施術経験も豊富。

平成16年に「あきさか整骨院」を開業。現在は「あきさか整体院・枚方自律神経調整院」として、原因不明の不調や自律神経バランスの乱れに悩む方々の改善追求に尽力している。

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